美術・芸術

【バスキア】を語らずにはいられない『バスキア展:Jean-Michel Basquiat』

正直、驚いた。

それは、初めての感覚だった。

おそらく、自分の感性にすごくフィットする作風なのだろう。「来てよかった。」そして、「ずっと見ていたい。」心からそう思える作品ばかりだった。

「よかった。」の一言で片づけられない、『バスキア展』について、今日は思うがままに語ってみたい。

『バスキア展』に行ってきた

バスキア_Basquiat

バスキア_Basquiat

本日、2019年10月24日(木)、【バスキア展@森アーツセンターギャラリー】へ行ってきた。

日本初開催となるバスキアの作品群を集めた展示会で、大作から日常のスケッチのようなノートの切れ端、そして来日時に訪れたレストランでの壁書きなど、実に様々なバスキア作品に触れることができる空間が用意されていた。

いくつかの作品は写真撮影”可”とされていて、当記事内で掲載している写真はその一部である。

また、女優の吉岡里穂さんがナビゲートしてくれる音声ガイドを無料で借りることができ、一部の作品ではそこに込められたバスキアの想いや歴史的背景などを聞きながら鑑賞することが可能だ。

私が行ったのは平日の午前中(会場には10:30頃到着)ともあって客足はまばらかと想像していたのだが、チケット売り場には既に行列ができており、30分程並んでようやくチケットを購入し入場することができた。

また、会場についてからは、周囲の人の多さが時間が経つにつれ増していくように感じた。(自分が鑑賞を終えた辺りを振り返ると、自分がいた時よりも明らかに人が多くなっていた。)

『バスキア作品』と対峙して

バスキア_Basquiat

バスキア_Basquiat

さて、まずはじめに、私は美術・芸術の世界について、専門的な事はよく解らない。

様々な芸術家や作家、アーティストの各作品の置かれていた時代背景や、正しい捉え方などを勉強した経験もない。「印象派」と「象徴主義」の違いはと言われても説明することなどできない。

でも、芸術が好きだ。美術が好きだ。

ピカソにモネ、そして大観から中島千波など、大御所の作品から、地方のご当地芸術家の美術館など、これまでも私の琴線に触れる作品を創り出す作家たちの展覧会には、何か吸い寄せられるように足を運んできた。

MoMAにも行った。

私の中では、今回の『バスキア』も同じ感覚、、だった。

だが、何かが違った。今回は。バスキアだけは。

それが何なのか。自分でもよく解らない。

ZOZOの社長であった前澤氏が落札した”Untitled”という作品(当記事のトップ写真)の映像をニュースで目にした時も、「なんか見たことがあるな。」ぐらいのものだった。

そして今日、本物に触れた。

バスキア_Basquiat

バスキア_Basquiat

ありきたりの言い回しではあるが、やはり本物に触れなければ、実際の所は何も解らない。(もちろん、本当に”タッチ”してはいけない。本物の絵画を目の前にして、眼を通して、”心の手”で隅々まで触れるのだ。)

実は、数週間前にたまたまネット上で何かの拍子に「バスキア展」の広告に触れ、なんとなく「行ってみたいな。」というぐらいの感覚をぼんやり持っていた程度だった。

そして数日前、改めてブックマークしていた特設Webサイトを見て、「よし行こう。」と時間をつくることを決めた。

バスキアの作品は、「絵」と「文字列」の融合であるものがほとんどだ。

そして、そこに一見”喧嘩”をしてしまいそうな「様々な色彩」が重なりあっている。

私は幼い頃から絵と文字ばかり書いていた。描くことが本当に好きだった。

ただその一方で、私には「色」に対する苦手意識があった。

絵を描くにも、線は描けるものの、そこに色を乗せていくと、自分でも作品が”落ちて”いくのが判るのだ。

表現の手段として「色」というものをどのように描いていけば良いのか、解らなかった。

今回、バスキアの作品に触れ、点と点が繋がった。

バスキアの作品というのは、その作品で表現したい「イメージ」を形にして落とし込むために衝動的に描かれた”絵”と、そこに「主張」の一部である”文字列”が作品のエッジを際立たせるためのエッセンスとしてトッピングされ、さらにはそれらを「世界観」としてまとめ上げ、作品に迫力を訴える役割を担う”色”たちが幾重にも重なっていく、という構成、これら3点セットで成り立っている様に思う。

まさに私が自分自身で描く際に通って来た道の「完成形」、イメージの具現化の手法がそこにはあった。

バスキア_Basquiat

バスキア_Basquiat

バスキアはわずか10年程度しか活動していない。

当初は生まれ育ったニューヨークの街の壁に社会風刺などをもとにしたグラフィティ作品を描き、”SAMO”というネームを残す「正体不明」の作家であった(当時は共同制作)。現代における『バンクシー』のようなものだ。

今回の展示会の最終版で見ることのできる”GLASS NOSE”という作品には、彼のそれまでの作風からは程遠い表現がなされている。(残念ながら撮影不可だった。)

旧ソ連の情報統制に対する強い社会風刺が描かれているということもさることながら、そこに描かれるキャラクターが、それまでの描写とは全く異なるのだ。

それを見た時、「死の直前、自分の主張を作品に投影するための、何か新たなツールを自分の中で見出しつつあったのではないか。」「もっともっと長い時間があれば、さらに表現の幅が拡がっていたのではないか。」そんなことを感じずにはいられなかった。

私は数々のバスキア作品に触れながら、その時感じた感覚をメモせずにはいられなかった。

こうした感覚、そしてそうした想いを「残しておきたい。」と感じたのも、これまで数々の美術館等へ行ってきた中で初めての事ではあったが、最後にそれらを記しておきたいと思う。

彼の作品から放たれる”力強い主張”、”衝動的な描写”、そしてなによりその”美しい色”を、是非肌で感じてみて欲しい。

→ 『バスキア展』の詳細

(以下、個人的感想。)

  • 色合いが非常に美しい。各作品において、載せられている色が実に多い。パステル系のカラーと言うこともあるのか、ずっと見ていられる柔らかな色ばかり。水色寄りの青。淡いピンク。橙色寄りのオレンジ。調和を崩さず描かれたピンクと赤と茶。Goldに深い深いグリーン。どこか柔らかさを感じさせるイエロー。そのどれもが”キレイ”
  • クレヨンで描かれる線は、無機質な印象を与えるどころか、幾重にも重なることで立体感を生み、そして物語を紡ぐ
  • 作品中に数多く描かれる文字列が、あたかもそれ自体が”絵の一部”の「線」として描かれているかのように、各作品に”締まり”をもたらしている
  • 作品中の文字や数字の”フォント”の部分に、彼自身の「訴え」が投影されているように感じる
  • ほとんどがカンバスにアクリル、オイルスティックという描き方だが、至近距離で観ると判るその絵の具の厚さからは、彼が筆を走らせている”その時”を共有できている様な気分に浸ることができる
  • 「1枚のドア」や「布上の紙」、「木の板」など、様々なものをキャンバスにし、その素材感がまた彼の世界観を引き立たせている
  • 作品”387”の色、「GOLD」と「GREEN」が、物凄く”美しい”
  • 各作品の「顔」の表現が、眼や鼻、口の形や位置、描き方によって何かを表現しようとしている様で、「ピカソ」を想起させる
  • (会場で流されている映像に出て来るバスキアは)ニューヨークの街の壁に、周囲を気にしながらも淡々と黒のスプレーで顔や文字を描いていき、何かイメージを膨らませながら描いている様には見受けられない
  • 作品中には「骸骨」や「王冠」のモチーフが多い。骸骨は8歳の時、車との接触事故で入院した際に母親からもらった「グレイの解剖学」の本のイメージから来ていると言い、王冠は王朝制度に対する何かの表現ではないかとされている
  • 作品中のほとんどの「直線」が”真っすぐ”ではなく微妙に”うねっている”という部分に、本人もまるで手に導かれるがままに描いているかの様に感じさせる
  • 多くの作品に登場する「顔」の表現は、至近距離では明らかに全体のバランスを考慮することもなく、思うがままに引いた線の重なりという風なのに、遠目にはその線が織りなす1つの顔が豊かな表情を持っている
  • 実に多彩な「色」を用いているにもかかわらず、全体としてなぜかまとまりを失うことはなく、逆にそうして様々な色を重ね、散りばめていることで、1つの作品としての”緩急”や”強調”が生まれ、単調な作品と感じさせることを防いでいるかの様
  • バブル期という日本の絶頂期に訪日していたこともあり、彼自身が日本全体からほとばしるエネルギーを感じ取り、作品中には「YEN」や「五重塔」、「広告文字」など様々な日本文化が描かれているが、当時の日本から彼が実際にはどんな事を感じ取っていたのか、日本の何にイメージを膨らまされたのか、そんなことを彼の作品にもっともっと長い時間触れることで想像を膨らませてみたくなる
  • 最晩年の作品”GLASS NOSE”には、軍帽を被った漫画調のキャラクターに強い政治的皮肉(ゴルバチョフのグラスノスチ)が込められているとともに、それまでとは全く異なる作風となっている。それまでとは違い、単調な線と色によって、伝えたいメッセージ(社会風刺や体制批判)によりフォーカスが当たるように意図していると感じる

 

最後までご覧いただき、ありがとうございました!

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